用語の説明

用語や図面の説明

                                                                              count

監理と管理   


 読み方は同じですが、意味するところはずいぶん違います。

    「監理」とは設計者側からの監督業務のことをいっている言葉です。それは設計された建物が正確に図面通りに施工されているかどうかを監督する業務のことです。そして建築の設計監理は建築士のみが行なえる業務となっています。 確認申請では監理建築士を置くことが求められており、その果たす役割のひとつとして、建築士法第28条3項には、「建築士は、工事監理を行なう場合において、工事が設計図書の通りに実施されていないと認めるときは、直ちに、工事施工者に注意を与え、工事施工者がこれに従わないときは、その旨を建築主に報告しなければならない。」とあります。もしこのことが正しく行なわれていなければ、施工業者は自分の工事の不良を建築主に報告するという、よほど良心的な施工業者でない限り、施工不良個所は普通どうしようもなく手後れになってから分かるか、あるいはずーっと分からないまま(つまり、知られないまま)になってしまうかのどちかになるでしょう。建築主にとっても施工業者にとっても「監理」は大切ですね。

   一方、「管理」は施工者側からの現場監督の業務のことを言っている言葉です。図面に示されている建物の性能や品質を確保したり、コスト縮減や省エネ、省資源、リサイクルのほか、VE手法も考えます。また、建築主さんのことはもちろん、隣り近所の皆さんのこと、通学路の児童のぼくたちのこと、各職種の工事人のこと、作業工程や段取りなどにも気を使います。建築工事を施工するにあたっては、工事を円滑に進めるため、施工者側の優れた技術が必要です。そのためにも建築技術の高度化、多様化にしっかり歩調を合わせなければなりません。じっくり勉強することも必要なのです。環境問題も考慮に入れます。皆さん、このごろ建設現場でごみを燃やしているのは見かけなくなっていませんか。以前は、燃やせるものは現場内処理して、減量することが当たり前でしたが、最近はそうすることもしていません。お金を払って処理してもらっているのです。現場監督さんもたいへんですね。

   ですから、設計者側の「監理」として業務に携わる者と工事施工者側の現場監督として「管理」する者とは別の人物であることが望ましいのです。話し合いの中では発言の意味を明確にするため,便宜上,「監理」のことを「さらかん」、「管理」のことを「たけかん」と言ったりしています。

基本計画

設計には基本設計と実施設計があります。

まず、基本計画にはだいたい次のものがあります。

@ゾーン計画:

  最初期のこの段階では建築主のお話にしっかりと耳を傾けて要望・希望を明確に捕らえる必要があります。十分な話し合いの中で、次第に明らかにされた要望・希望・要求条件にそって全体のゾーンを機能別に分け、各ゾーンの生活の快適性やつながりなど、ごく基本的なものを大まかに示していきます。これは平面計画のもとになるものです。たいていA3くらいの紙に鉛筆や色鉛筆などで丸や四角、大きな文字や矢印などを描いていきます。もちろんフリー・ハンドで描きます。このヒアリングはどの段階においてもとても重要なので、お互いに時間をかけたほうがいいでしょう。

A構想図:

  ゾーン計画を発展させたもので、建築主の要望・希望を実現可能な建物のイメージとして図面で表現します。それらは簡略図といえます。外観のデザインをはじめ、敷地内における建物の位置や方向、周辺の道路状況、各部屋の構成とつながりなどをイメージとしてとらえることができる図面です。法規や構造との関係も考慮します。前面道路にある公共排水桝に対して、わざわざ遠いところにキッチンやバス、トイレなどは普通配置しません。これもまた、現場調査をしたりしてよく知っていないとできないことです。

基本設計

     基本設計では本格的に建物のデザインを決めます。これにより、この建物に住む人の生活が展開される場を本格的に設計するのです。基本的な外形や間取りはこの段階で順次決定されていきます。ここに至るまでには、建築主のさまざまな要求やその思いの中にある要望・希望をコンサルティングによって明確にし、同意を得ながら一つの形にまとめていきます。いろいろとあれやこれや考えあぐねて一つの形を産み出します。疲れもしますが、楽しくもあります。これは「精錬」といえると思います。そして確認申請の書類を提出します。本来、確認申請は建築主がすることになっていますが、実際には専門的な経験をもつ建築士がやる以外にはないといえるでしょう。かなり複雑なやりとりを役所ですることになるからです。


基本設計図

1. 配置図

   構想図の配置図をより正確にまた詳細に示したもので、隣地との境界、門や堀の位置、近隣や道路  との関係、日照条件、庭の取り方、駐車場の取り方等がわかる図面です。

2.平面図(各階)

  最も重要で基本的な図面の一つで間取り図ともいいます。部屋や階段、収納スペースの位置や広さ、廊下・階段幅、主要な柱と壁の位置、窓等の位置、窓等の開口部の大きさと種類、内・外部の建具の開き勝手、造り付け家具や設備機器の配置などがわかる図面です。水平の断面図といっていいでしょう。優先順位の高い図面でもあります。

3. 立面図(各面):
 
  東西南北の4面からの外観図です。屋根の形、バルコニーやテラスの位置や形、窓の位置や形、それに棟換気口の位置、外部仕様等もわかる図面です。建物をそれらしく見せてくれるとても楽しい図面で、建築主の方々が最も興味をもたれる図面ではないでしょうか。

4. 断面図:

  建物を垂直に切断して内部の立面を示した図面です。建物の高さ、屋根の勾配、軒の高さ、各階の床高、各部屋の天井高、窓や腰壁の高さ、階段寸法などが分かります。建築物は空間を処理するものなので、この断面図によって空間の高さを表現します。建築物にとって意味があるのは内部空間だ、とさえいう人がいます。正しいことです。ですから、断面図は大切なんです。

5.仕上表:

  外部仕上表と内部仕上表からなっており、外部では屋根・外壁・外部建具やポーチ廻りに使われる仕上げ材、内部では各部屋の床・壁・天井等の仕上げ材の他に、造作部材等の内容を記載しています。建物がどんな仕上げになっているかがわかる図面です。数ある図面の割とはじめのほうに綴られている図面で、特記仕様書と同じく、図面というよりかはほとんど文字で表現されているものです。

  6.軸組図:

    軸組図は壁面の骨組みを立面に表わしたものです。軸組を構成すものには、木造の場合、土台・通し柱・管柱・間柱・胴差・軒桁・窓台・まぐさ・筋かいなどで、それらの寸法・材料などが示されています。
    

実施設計図

配置図・平面図・立面図・断面図

基本設計の図面に修正を加えながら、どんどん詳細を加えていき何がどうなっているのかを詳しく示します。

1.矩計図: 

    「かなばかりず」と読みます。建築用語です(参考;「矩形:くけい」は四角の意味で、「かなばかり」とは意味が違います)。基礎から屋根(軒先回り)に至るまでの建物の高さの関係を詳細に示したもので、構造上主要な詳細断面図です。基礎の大きさ、根入れ深さ、床の下地材の厚さなど主要な構造部などの状態がわかります。

2.天井伏図:

   天井の意匠や仕上げを示す図面で、天井のインテリア構成のチェックに役立つ図面です。それぞれの部屋の天井の状態が見上げたような状況で図示されます。一種の水平断面図で、天井の姿図、天井の意匠図といえるものです。正投影図で描かれます。

3.床伏図:

   床は水平な面です。土台・梁・大引き・根太などの部材が水平に組まれますので、床伏図はその水平面での部材の配置を示す図面です。つまり、床面下の構造を示した図面のことで、根太や大引き、梁、柱等の位置や状態がわかる図面といえます。

4.基礎伏図:

   布基礎・独立基礎・フーチング・土間コンクリートなどが配置されている状態や種類、大きさなどを平面的に示す図面です。基礎がどうなっているのか、この図面でよく分かります。

5.展開図:

   室内仕上げの状況を示す立面図で、部屋の中心に立って四方の壁を見渡したとき、その見える状態をそれぞれの面ごとに描かれている一連の図面です。この図面は各壁面のインテリア構成のチェックに役立ちます。何回も修正する訂正の多い図面の一つです。設計者が建築主に設計主旨をを説明するのにこの展開図と簡単なパースが提出できるなら、建築主がたとえ素人であっても室内空間についてよく分かってもらえることでしょう。

6.建具表:

   建具のすべてを表わしたものです。建具の大きさや種類、材質、開閉の形式、サイズ等が分かる図面です。

7.電気配線設備図:

   電気の屋内配線の状態を示したもので、照明器具の取付位置、コンセントやスイッチ類の位置(高さ・寄り)や種類などが分かる図面です。シンボルで表わされているので、機器リスト、系統図、凡例を見ながらこの図面を見てください。

8.給排水衛生設備図:

   給排水の配管の状態や衛生器具の位置、種類などを示した図面です。道路に埋設されている水道本管から部屋の中の水栓に至るまでの配管などの道筋が示されています。同様に、使用された水が道路にある公共桝に至るまでの道筋も明らかにされています。快適にお水が利用できるだけでなく、トイレや流し台、浴室からくる不快な臭いを処理したり、音(給水の流動する音や排水する音)や振動を軽減したり湿気をおさえたり、といろいろな工夫があります。配管設備の詳細や使用される部材や部品、設備機器リストなどが示されていて、建物が完成したあとはメンテナンスに役立ちます。設備機器の仕様を確かめるのになくてはならない図面です。

9.空調設備図:

   空気調和設備図面のことです。空調のための設備機器の仕様・配置・系統などが図面に示されています。室外機は大きさにもよりますが、その置き場所によっては建物の構造にも影響を与えたり、振動や騒音など建物内外にも関係してきます。人が集まったり居住する部屋や労働する部屋(このごろでは倉庫も)に冷暖房がなかったらどうでしょうか。年間を通じて常時冷房・常時暖房という部屋や建物もあります。空調設備もとても重要な設備です。

10.ガス設備図:

   都市ガスが供給されている地域もあれば、LPガス・ボンベを設置する地域もあります。この図面には、道路埋設されているガス本管やガス・ボンベなどから、台所などガスが必要な部屋に至る配管の経路が示されています。お水のように排水をとらなくてもいいのですが、ガス燃焼後の気体や熱を、排除したりうまく利用したりするなど、なかなか考えどころがある設備です。このごろは全電化住宅があり、ガスが供給されていない住宅・マンションもあります。