施工図のこと

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設計図と施工図

 

設計図」という図面は建物の建築主、使用者などの要望・希望・要求条件をもとに設計者によって作成された基本的な工事計画書です。これは多くの物事にかかわる、とても重要な意味を持つものです。給排水衛生設備や空調設備の設計図は、他の設計図と同様、それら設備の完成した形を図面化したものではあっても、経済性や施工性、安全性の検討が十分になされているとはいえません。また、他業種との取り合い・収まりの調整も完了していません。建設工事がまだまだ始まっていないのですから、それも無理のないことです。ですから、設計図をそのまま拡大しても実際に建てる作業のための施工図にはならないのです。

 

各種工事の実施にあたっては、具体的に、また、詳細に工事の内容を記載した図面が必要になってきます。設計図では詳細な情報が不足しているため、設計図を熟読していくといろいろな疑問点や確認したい項目がどんどんでてきます。そこで「施工図」が必要となってくるのです。施工図を作成することにより,施工の経済性や施工性、納まり、安全性などを設計の主旨を踏まえながら,他業種と調整することができます。

  また、施工図は関連業種の責任者のチェックを受ける必要もあることでしょう。それらチェック済みの施工図は工事作業者に対する作業指示書でもあり、この施工図で個々の作業者に指示を与え、資材の手配も行ないます。施工図を作成する段階で、疑問点や確認したい項目を見つけ出し、調整・解決した上で工事作業者に渡すのです。

  施工図を作成する人が設計の思想・主旨を十分理解し、作業の手順、方法、時期、スペースなどを把握していなければ質の高い施工図は描けないのです。施工図の優劣は施工品質の良し悪しに直接影響します。それで、施工図は設計図に劣るものではありません。施工図もとても重要な図面なのです。建物は実際にはこの施工図によって建てられていくといっても過言ではありません。

 

一般に「図面」というと、設計図のことと理解されているようですが、がんばって施工図を描いている者にとってそういう意識があることは残念なことです。施工図という言葉を知らない人もいます。その価値が分からない人、知らない人もいます。設計図は描けても施工図は描けません、という人もいます。またその一方では、「施工図があって当たり前じゃないか。なくてどうするんだ!」という現場監督もいます。監督的立場にある人にとって、工事全体を円滑に進めていくために施工図はなくてはならないものなんです。

 

施工図のことがもっと正しく知られてほしいと思っている人は、きっと大勢いると思います。

 

  衛生・空調設備の施工図のねらいとしては、次のような点が挙げられると思います。

 

             1.建築主・設計者の要求条件に合っていること、満たしていること。

             2.手直しや手戻りなく施工できる図面であること。

             3.作業者が理解しやすい内容の図面であること。

 

  施工図作成の要点はだいたい次のとおりだと思います。

 

             1・設計図書に意図された機能・性能と耐久性を確保すること。

             2・施工性がよく,省力化が図られ、資材が経済的であること。

             3.施工工程に余裕をもって作成・承認を得ること。

             4.施工上の安全性が反映されていること。

             5.誰が描いてもレベルに差異がないよう基準化を図ること。

             6.納まり上の美観と保守の容易性を考慮すること。

             7.増改築等に対する考慮がなされていること。

         (まだ他にも挙げることができるかも知れません)