建築設計事務所について

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  建築の設計は、創造的な仕事であり、また総合的な技術でもあります。またそれは、重要な技術であり、ある面では芸術であると言えます。技術にしろ芸術にしろ、それを習得することは簡単なことではありません。

  設計事務所とは、建築技術の知識が少ない建築主に代わり、建築計画から工事完成まで、施工者と工事のやり取りを行なうところです。いわば建築主の代理者の役を果たすのです。 

  設計事務所の役割は、建築主の希望・要望に十分耳を傾けて聴き、その上で持ち前の豊富な知識と経験によって具体的な提案をしたり、建築図面を作成して適正な価格と技術のある施工業者を選定したり、工事発注を行なったりすることです。工事着工後は、工事が図面通り行なわれているかどうかを現場でチェックする監理業務も行ない、そのようにして工事完成を見ます。建物引渡し後は、メンテナンスの提案もします。

 
 「建築とは文化を容れる器である。」 これは近代建築の巨匠グロピウスの言葉です。家庭を容れるには住宅、映画や演劇を容れるには劇場、信仰を容れるには教会や寺院、生産を容れるには工場、教育を容れるには学校、などなどいろいろの器があります。人間の文化や文明にとって、建築という器が必ずと言ってもいいくらい必要なものであることは、だれもが認める事実でしょう。しかし人々はそのことに慣れてしまって、それら器なるものを設計・考案するという重要さに気づかないでいたり、見過ごしたりしているかのようです。

 ほとんどの建築設計事務所は、何も奇抜な建物を創りだそうとしているのではありません。それぞれの建築は、それぞれの内容と条件を備えていなくてはなりません。互いに矛盾した条件をも容れなくてはならないこともあります。たとえば,大勢の人が手軽に出入りすることができて、しかも、静かで落着いた場所をつくらねばならない、というようなことです。建築物の用途によりいろいろな条件があります。それらを包みこんで,より良い建築を設計するため、適正な計画(デザイン)を練り、創造的な計画を積み重ね、綿密な計画案がなされて完成されて行くのです。

 その作業は、図面によって表現され、提案され、確認され、啓発されながらまとめられていきます。そういう中で描かれる図面が計画の図面です。計画とはなかなか正体のつかめない作業ですが、たとえば、配置計画・平面計画・意匠計画・構造計画・設備計画などと呼ばれるような内容の計画作業があります。


 「釣りは鮒に始まり、鮒に終わる。」という言葉がありますが、それと似た意味で「建築設計は住宅に始まり住宅に終る。」ということができると思います。人々にとって住宅は最も身近な建築であり、多くの建築士にとっても設計の機会が多い建築でもあります。家族は最小の社会であり、それは社会の基本を成しています。またそこには大きな社会が集約されているともいえます。家族が生活を展開する住宅は、安らぎの場、憩いの場であり、また仕事をし働く所であり、さらに楽しみ、かつ考える所でもあって、建築の持ついろいろな要素を含んでいます。ですから、住宅は建築の計画または設計の基本であり出発点であるといえると思います。たとえ小さな住宅であっても住む人の要望・希望や設計者の思想ともいうべきものを、充実させ表現することができる奥深い課題だ、といえると思います。



 A.T.I.(株)一級建築士事務所さんのホームページ(http://www.jade.dti.ne.jp/~ati/)には次のような分かりやすい説明がありましたので、ここに一部引用させていただきます。

<設計事務所への業務依頼の考え方と工事発注の注意点について>

1. 設計事務所の立場

施主の代理人として建築という専門的な仕事をします。
施主にとって最も有利な方法を選択し、業務を遂行します。
施主とは一体になって業務を行ないますから疑問点をつぶしていくように協議しながら進めます。

2. 設計事務所の役割

設計者=監理者 ←→ 施工者
2者は一体となるべきではありません。分離して発注するものです。設計者は第三者的な立場から施工上のミス、不正を監督し許しません。施工と設計者が同一の会社の場合は工事費の数パーセントの不正をすることは容易なことです。
よく施工者(ハウスメーカーに特に多い)で設計料サービスというところがありますが実際は下請けの設計事務所に図面を書かせて支払いも発生しています。これらが施工を請け負ったときに元をとるのは日常的に行なわれていることです。施主はそのことを気付くことも無く“ただより怖いものは無い”です。その為にも専門的な目で施主の代理人である役割が必要になります。

3. ハウスメーカーの長所と短所

ハウスメーカーでは既製品を大量に生産することで価格を下げています。よって必ず安価にするルールが発生し、その枠からはずれたもの、イレギュラーなものに対しては極端に対応が悪くなります。コスト的にも本来の長所が生かされません。木造2/4、鉄骨メーカーが鉄筋コンクリート造の建物を受注するときはノウハウを持っていませんから総合建設業(ゼネコン)に一括丸投げしますので施主が直接発注したほうが安くなることは明らかです。    (引用ここまで)
                

  上記の引用の中には、設備設計事務所としても思い当たることがあります。同意できる点があるからです。